消費税の免税事業者から課税事業者になったときの棚卸資産の取り扱いについて

消費税の免税事業者から課税事業者になったときに、注意しなければならないポイントとして棚卸資産があります。

もし課税事業者になったときに、免税事業者時代の棚卸資産が残っているときは、その棚卸資産は消費税の仕入税額控除とみなされます。

この棚卸資産の仕入税額控除のみなし規定を漏らしてしまうと損をしてしまいます。

今日は免税事業者から課税事業者になったときの棚卸資産の取り扱いについてご紹介します。

 

消費税 棚卸資産

jackmac34 / Pixabay

 

消費税の計算

免税事業者のときは消費税を納める必要はないのですが、課税事業者になると消費税を計算して納めなくてはなりません。

この消費税の計算式は、

預かった消費税ー支払った消費税=納める消費税

となります。

 

例えば、税込み54円の商品を仕入れて、その商品を税込み108円で売った場合。

消費税は8%なので、

預かった消費税は売上の8円、支払った消費税は仕入れの4円となります。

この取引のみと仮定した場合、納める消費税は8円ー4円=4円となります。

 

仕入税額控除とはこの商品の仕入れのように支払った消費税のことです。

よって仕入税額控除が多いほど、納める消費税が少なくなります。

 

 

免税事業者が課税事業者になったとき

免税事業者のときはそもそも消費税は関係ないので、預かった消費税を納めることも、支払った消費税を控除することもありません。

ただし免税事業者のときに仕入れた商品が課税事業者のときに売れた場合、その売上にかかる消費税は預かった消費税として納めなくてはなりません。

よってこのままでは、その商品については、預かった消費税は納めて、支払った消費税は控除することができないことになります。

この不一致をなくすために、免税事業者のときに残った商品、つまり棚卸資産は、課税事業者のときの仕入税額控除とみなして、預かった消費税から控除することになります。

 

 

例題

それでは次の例題でみてみましょう。

  • 免税事業者のときに残った棚卸資産 54万円
  • 課税事業者になった事業年度の総売上高 1080万円
  • 課税事業者になった事業年度の総仕入高 864万円
  • 課税事業者になった事業年度に残った棚卸資産 108万円

※すべての取引は消費税の課税取引とする

 

預かった消費税は、

総売上高の1,080万円*8/108=80万円

となります。

 

支払った消費税は、

総仕入高の864万円*8/108=64万円

免税事業者のときに残った棚卸資産の54万円*8/108=4万円

となります。

 

よって納める消費税は80万円ー(64万円+4万円)=12万円となります。

 

 

《注意》

 

課税事業者になった事業年度に残った棚卸資産については、基本的に調整することはないのですが、その次の事業年度が免税事業者になる場合、つまり課税事業者から免税事業者になるときは、この課税事業者の事業年度において調整が必要となります。

 

この場合、免税事業者から課税事業者になったときの反対のことが起きますので、課税事業者になった事業年度に残った棚卸資産については、支払った消費税から引く必要があります。

 

上記の例でいいますと、預かった消費税は80万円で変わりませんが、支払った消費税は64万円+4万円ー※8万円=60万円となります。

 

※108万円*8/108=8万円

 

よって納める消費税は80万円ー60万円=20万円となります。

 

 

まとめ

今日は消費税の課税事業者になったときの棚卸資産の取り扱いについてご紹介しました。

消費税の免税事業者から課税事業者になったときは、この棚卸資産の仕入税額控除の適用漏れがないか気をつけましょう。

 

 

※この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。

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