繰延税金資産とは、税効果会計を適用すると出てくる科目です。
この繰延税金資産ですが、取り崩すときは法人税等調整額という科目で費用にプラスされます。
よってその分利益が減少することになります。
また繰延税金資産は、大赤字の決算の時に一気に取り崩すことがあります。
そうなってしまうと、赤字額が拡大し、最悪その会社の株価の下落につながってしまいます。
今日は繰延税金資産が大赤字の決算などで取り崩したとき、会計にどのような影響を与えるのかについてご紹介します。
税効果会計の記事はこちらに書いてます。
繰越欠損金による繰延税金資産
繰延税金資産は取り崩すときに、同額を法人税等調整額という科目で費用にプラスするので、多額に計上されているときは注意が必要です。
繰延税金資産が多額に計上されるのは、おもに繰越欠損金により計上されたときです。
繰越欠損金とは、当期の赤字額を繰り越して翌期以降の黒字額に相殺できるものです。
よって相殺できる分、翌期以降の税金負担は軽減されます。
翌期以降に軽減されるであろうこの税金負担額を繰延税金資産として資産に計上します。
具体例として、繰越欠損金が発生したときの決算書の表示は次のようになります。
税効果会計適用前の決算書です。
税効果会計①
最終利益を会計上の利益にするため、税効果会計を適用します。
税効果会計②
このように税効果会計を適用して最終利益を会計上の数字にします。
大赤字になったとき
繰延税金資産は将来、税金の負担が軽減されるので資産として計上しています。
よって税金の負担が軽減されたときにその資産を取り崩します。
ただしこれは利益が出ることを想定しています。
利益がでなければそもそも税金は発生しません。
税金が発生しなければもちろん軽減もありません。
よって大赤字が発生し、それ以降も黒字が見込めないと決算書をチェックする監査法人などがそう判断したときは、資産として計上している繰延税金資産をその時に一気に取り崩すことになります。
そうなると大赤字の上にさらに繰延税金資産の取り崩した額の赤字がプラスされることになります。
上記の例で、翌期に大赤字になり、繰延税金資産を一気に取り崩した場合は次のようになります。
税効果会計③
翌期の赤字額150万円に40万円の法人税等調整額がプラスされて赤字額が190万円と拡大してしまいました。
まとめ
今日は繰延税金資産が大赤字の決算などで取り崩したとき、会計にどのような影響を与えるかについてご紹介しました。
繰延税金資産は将来の税金負担軽減分です。
大赤字の決算などが生じ、今後も黒字の見込みがなく税金負担が発生しないと判断されると繰延税金資産を一気に取り崩すことになります。
その分、赤字額が膨らんでしまいます。
決算書に多額の繰延税金資産が計上されている場合はこのようなリスクもあることを覚えておきましょう。