法人成りのメリット!給与所得控除について

個人事業を法人成りすると、税務上いくつかメリットがあります。

また反対にデメリットもあります。

もちろん法人成りをするかどうかは、税金以外のことも考慮して決めると思いますが、税務上のメリットとデメリットもひととおり知っておいたほうが良いでしょう

 

今日はその法人成りのメリットのうち、給与所得控除についてご紹介します。

 

給与所得控除 法人成り

J_Hennemann / Pixabay

 

給与所得控除

まず給与所得控除とは、給与所得の概算経費のことをいいます。

この給与所得控除の金額は、給与収入の金額によりあらかじめ決められています。

計算は次の表を使います。

 

給与所得控除

 

例えば、給与収入が700万円の場合、給与所得控除額は、

700万円*10%+120万円=190万円となります。

 

結果、給与所得は、

給与収入700万円ー給与所得控除額190万円=510万円となります。

 

 

法人成りのメリット

それではこの給与所得控除が法人成りすることによってどのようなメリットになるのでしょうか?

それは、個人事業に比べて給与所得控除の金額分の経費が増えて、税金負担が減るということです。

 

どういうことかといいますと、

個人事業では、売上などの収入から経費を引いて所得を計算します。

法人も同様に、売上などの収入から経費を引いて所得を計算します。

ここまでは計算は基本的に同じです。

 

ただ法人成りをした場合、代表である社長に役員報酬を支給します。

この役員報酬は法人の経費となります。

また一方でこの役員報酬は、社長個人の給与所得にもなります。

よって、この時点では法人の経費である役員報酬と社長の収入である給与所得はイコールなので、トータルの損益は変わりません。

 

ただし、給与所得は給与所得控除額を概算経費として引けます。

 

よってこの概算経費の金額分、個人事業と比べて法人成りをしたほうがトータルの経費が多くなります。

 

 

具体例

それでは具体例でみてみましょう

同じ条件で個人事業と法人成りをした場合を比較します。

  • 売上1,000万円
  • 経費300万円

 

①個人事業

事業所得は、

売上1,000万円ー経費300万円=所得700万円

となります。

 

②法人成り

まず役員報酬を支給する前の法人の所得は、

売上1,000万円ー経費300万円=所得700万円

となり、個人事業と同じです。

 

次に役員報酬を500万円支給するとします。

そうすると法人の所得は、

売上1,000万円ー経費300万円−役員報酬500万円=所得200万円

となります。

 

次に役員報酬の500万円ですが、給与所得控除額を引けますので、

給与所得は、

役員報酬500万円ー※給与所得控除額154万円=346万円となります。

※上記の表より、給与所得控除額は、500万円*20%+54万円=154万円

 

法人の所得と給与所得を合計すると

546万円となります。

 

 

 

よって個人事業と、法人成りを比較すると、

個人事業の所得は700万円、

法人成りの合計所得は546万円

となり、法人成りのほうが154万円、所得が低いです。

この差額分は給与所得控除額の金額です。

 

給与所得控除 比較表

 

 

このように、法人成りしたほうが給与所得控除の金額分、経費が増えて税金負担が減ることになります。

 

 

《注意》

 

個人事業は、青色申告をして青色申告特別控除65万円の控除を受けているケースがあります。

 

法人には青色申告特別控除がありませんので、法人成りするとその金額分は控除できないのでデメリットとなります。

 

また税率も個人と法人では異なります。

 

実際はこれらすべての要素を考慮して、メリットデメリットを比較していきます。

 

 

まとめ

今日は、法人成りのメリットの1つである給与所得控除についてご紹介しました。

法人成りをして役員報酬を支給すると、その給与所得控除額分の経費が増えます。

その分、税金負担が減ります。

 

法人成りのメリットはこれ以外にもあります。

一方法人成りするデメリットももちろんあります。

法人成りのメリットやデメリットについては、また別の記事でご紹介していきます。