棚卸資産の仕訳の基本

商品などの棚卸資産を仕入れたときは仕入という勘定科目を使って仕訳を作成します。

この仕入勘定は費用の項目です。

ただし会計の原則では、費用になるのはその商品を仕入れたときではなくその商品が売れたときです。

商品が売れたときに売上を計上して、それに対応する費用として仕入を計上します。

このように売上と仕入を対応させて処理するのが会計の原則です。

しかし、実務では一般的に商品を仕入れたときに仕入勘定を使って費用処理します。

そして売れずに残った商品を仕入から棚卸資産に振り替える仕訳を作成します。

 

今日はこの棚卸資産の仕訳についてみていきます。

 

 

棚卸資産の仕訳

仕入れた商品が売れたときに費用に計上するのが会計の原則です。

よって、商品を仕入れたときは仕入勘定を使わず、商品という資産の勘定科目を使うのが本来は望ましいです。

そしてそのあと、その商品が売れたときに、売上の仕訳と同時に商品から仕入に振り替える仕訳を作成します。

 

①商品を仕入れたとき

借方 金額 貸方 金額
商品 150円 現金 150円

 

②商品が売れたとき

借方 金額 貸方 金額
現金 200円 売上 200円
借方 金額 貸方 金額
仕入 100円 商品 100円

 

このような仕訳処理をすれば、売上と費用が常に対応されますので問題ありません。

ただし実務上はこの仕訳処理を商品が売れるたびに作成するとなると大変です。数量が少ない場合は可能かもしれませんが、大量の数になると現実的ではありません。

そこで商品を仕入れたときは仕入勘定で処理しておき、期末時点で売れずに残った在庫を決算仕訳として商品勘定に一気に振り替える処理をします。

つまり売れていない商品を費用から資産に振り替えることで、売れた分だけを仕入勘定にすることになります。

 

①商品を仕入れたとき

借方 金額 貸方 金額
仕入 150円 現金 150円

 

②商品が売れたとき

借方 金額 貸方 金額
現金 200円 売上 200円

 

③決算時(今期の在庫分を計上)

借方 金額 貸方 金額
商品 50円 仕入 50円

 

このように決算時の棚卸資産の仕訳さえ作成すれば、売上に対応する仕入の金額となります。

 

 

期首の棚卸資産の仕訳

次に期首に棚卸資産がある場合の仕訳についてみていきます。

たとえば当期、前期末に残った在庫が商品の勘定科目で残っているとします。

この場合、この前期末に残った在庫については、商品勘定から仕入勘定に振り替えます。

また期中では、新たに仕入れた商品は仕入勘定で処理しておきます。

そして期末時点で残った在庫分だけを仕入勘定から商品勘定に振り替えます。

つまり前期末の在庫と期中で仕入れた商品を仕入勘定にしておき、そのうち在庫として売れ残ったものだけを商品勘定に振り替えます。

 

①商品を仕入れたとき

借方 金額 貸方 金額
仕入 200円 現金 200円

 

②商品が売れたとき

借方 金額 貸方 金額
現金 300円 売上 300円

 

③決算時

(前期末の在庫分を仕入勘定に振替)

借方 金額 貸方 金額
仕入 50円 商品 50円

 

(今期の在庫分を計上)

借方 金額 貸方 金額
商品 100円 仕入 100円

 

前期末の在庫分の仕入勘定への振り替えは決算時にします。期首にしてしまうと期首を含んだ開始月の仕入の金額が大きくなるため、月ベースの数字を見る上で好ましくないからです。

 

棚卸資産の仕訳は決算時だけにするのではなく、できれば毎月行うのが望ましいです。業績は月次の試算表で確認することが多く、棚卸資産の仕訳を入れることで、より実態を反映した数字を月次ベースで把握することができるからです。

 

 

仕訳の例題

それでは例題でみていきましょう。

当期(事業を開始した年)

①100円の商品を10個仕入れました。

②そのうち6個が150円で売れました。

③残りの4個は売れずに期末まで残りました。

 

借方 金額 貸方 金額
仕入 1,000円 現金 1,000円

 

 

借方 金額 貸方 金額
現金 900円 売上 900円

 

 

借方 金額 貸方 金額
商品 400円 仕入 400円

 

この期に売れた商品は6個です。売上は6個*150円で900円です。対応する仕入は6個*100円で600円です。

上記の仕訳をそれぞれ合計すると、売上は900円、仕入は600円(1,000円−400円)となり売上個数で計算した金額と一致します。

 

 

翌期

①期首に4個の商品が残っています。

②追加で100円の商品を20個仕入れました。

③期中に15個の商品が1つ150円で売れました。

④期末時点で売れずに残った商品は9個でした。

 

借方 金額 貸方 金額
仕入 2,000円 現金 2,000円

 

 

借方 金額 貸方 金額
現金 2,250円 売上 2,250円

 

 

借方 金額 貸方 金額
仕入 400円 商品 400円

借方 金額 貸方 金額
商品 900円 仕入 900円

 

この期に売れた商品は15個です。売上は15個*150円で2,250円です。対応する仕入は15個*100円で1,500円です。

上記の仕訳をそれぞれ合計すると、売上は2,250円、仕入は1,500円(2,000円+400円−900円)となり売上個数で計算した金額と一致します。

 

まとめ

今日は棚卸資産の仕訳についてみてきました。

商品を仕入れたときは、期中は仕入勘定で費用処理しておき、そのうち売れ残った在庫については棚卸資産に振り替えます。

このように処理することで、売れた商品の売上と費用を対応させることができます。

棚卸資産については、まずはこの基本の仕訳を理解しておきましょう。