今日は前回に続き、消費税の税抜方式と税込方式のそれぞれのメリットとデメリットについて書いていきます。
前回の記事はこちらです
選択によって違いがでる項目
税抜方式と税込方式の選択によって違いがでる項目は次のとおりです。
- 棚卸資産
- 消費税の計上時期
- 減価償却資産の一時償却
- 交際費の損金不算入
- 特別償却・税額控除
これらの項目については、どちらを選択するかによって最終の利益や納める税金の金額が変わってきます。
よって選択の違いにより有利不利が出てきます。
それではそれぞれについてみていきます。
棚卸資産
期末に商品や製品といった棚卸資産が残っている場合、税抜方式と税込方式の選択の違いにより、その棚卸資産に含まれている消費税分、利益が変わってきます。
具体的な数字で見てみましょう。
例
1つ54円のリンゴを3つ仕入れて、そのうち2つは108円で売れて、もう1つは売れ残った場合(すべて税込。話を簡単にするため他の経費はないものとします。)
①税抜方式の場合
売上200円 − 仕入100円※ = 利益100円
※ 3つ仕入れましたが、1つ売れなかったので在庫としてりんご1つの金額を仕入れ金額より引きます。
仕入150円(3つ)−期末在庫50円(1つ)=100円(2つ)
税抜方式の場合、利益は100円となりました。
②税込方式の場合
売上216円 − 仕入108円※1−消費税4円※2 = 利益104円
※1 3つ仕入れましたが、1つ売れなかったので在庫としてりんご1つの金額を仕入れ金額より引きます。
仕入162円(3つ)−期末在庫54円(1つ)=108円(2つ)
※2 預かった消費税は16円(売上は200円) 支払った消費税は12円(仕入は150円)
消費税は預かった消費税から支払った消費税を引いて計算するので
16円ー12円=4円
税込方式の場合、利益は104円となりました。
よって、税抜方式より税込方式のほうが4円利益が多いです。この差額は棚卸資産54円のうちの消費税分4円です。
このように棚卸資産がある場合、その消費税分の利益はズレます。ただしこの差額の消費税分は、この棚卸資産が売れたときに仕入として費用となりますので、売れたときに解消されます。よって長い期間でみると、結果は同じとなります。
ただその期だけを比較すると、税込方式のほうが利益が増えるので、税務面からみると利益分の税金負担が増えるのでデメリットといえますし、財務面からみると利益が増えた分は業績がよくなるのでメリットといえます。
消費税の計上時期
税抜方式の場合は、消費税の金額は仮受消費税と仮払消費税という利益には影響しない科目で処理されるため、その差額分の消費税の金額はその期にしか処理できません。
税込方式の場合は、最終的に計算した消費税の金額を一括計上するので、その消費税の計上時期をその期にするのか、それとも次の期の消費税の申告納付時にするのかを選べます。
ただし計上時期の問題なので、これも棚卸資産と同様に長い期間でみると結果は同じです。
しかし計上時期を選択できるといった点で税込方式のほうにメリットがあります。
まとめ
今日は前回に引き続き消費税の税抜方式と税込方式のそれぞれのメリットデメリットについてみてきました。
棚卸資産や消費税の計上時期の内容は、長い期間でみると同じ結果になるので、どちらを選んでもそれほどメリットデメリットはないです。
上記の項目のうち残りの3つは選択の違いにより明確にメリットデメリットがあります。
次の記事でご紹介します。