国内において支払われる外国株式の配当金をもらったとき、外国の税金と日本の税金の両方がかかってきます。
日本株式の配当金なら日本の税金だけなので、外国株式の配当金のほうが税金面では不利です。
よってその不利な部分を調整するために、外国税額控除という規定があります。
今日はこの外国税額控除についてご紹介します。
※本記事は外国の上場株式の配当金をもらったときを前提に書いています。
あらかじめ引かれている税金
外国株式の配当金をもらったときは、あらかじめ外国の税金と日本の税金が引かれています。
例えばアメリカ株式の配当金の場合、現在の配当金にかかる税率は10%ですので、配当金が10,000円のときは
外国の税金
10,000円*10%=1,000円
となります。
次に日本の税金は外国の税金が引かれた後の金額を基準として計算しますので、
所得税(復興特別所得税含む)
9,000円*15.315%=1,378円
住民税
9,000円*5%=450円
となります。
よって合計で1,000円+1,378円+450円=2,828円が引かれています。
外国株式の配当金をもらったときの申告
外国株式の配当金をもらったときの確定申告ですが、申告方法は以下の3つあります。
これは日本株式の配当金と同様です。
①申告不要
②総合課税
③申告分離課税
①の申告不要ですが、配当金はあらかじめ外国と日本の税金が引かれているので、申告しなくても良いです。
ただし、外国税額控除は申告しないと適用できません。
②の総合課税と③の申告分離課税のどちらかを選択して申告するときは、外国税額控除が適用されます。
申告するかしないかについては、外国税額控除も含めて、有利不利を検討します。
《注意》
外国株式の配当金は配当控除の適用はありません。
《参考》
NISA口座については外国税額控除の適用はありません。
外国税額控除とは
外国税額控除とは、あらかじめ引かれている外国の税金を控除するものです。
上記の例だと外国の税金は1,000円です。
申告すると外国税額控除が適用されて、この1,000円が納める税金から控除されるかまたは還付されます。
よって1,000円分有利になるわけです。
外国税額控除の限度額
ただし外国税額控除は必ずしも全額引けるわけではありません。
控除できる限度額があります。
この限度額の計算は次の計算式で求めます。
①所得税
限度額=所得税の額×(国外所得金額/所得金額の合計額)
②復興特別所得税
限度額=復興特別所得税額×(国外所得金額/所得金額の合計額)
この限度額の範囲内なら所得税から全額引けますが、超える場合は、その超える部分の金額は引くことができません。
よって所得税から引ききれない場合は、次は住民税から引きます。
ただしこの住民税にも限度額があります。
この限度額を超える分の金額は引けません。
限度額は以下のとおりです。
①道府県民税
限度額=所得税の限度額*12%※
②市町村民税
限度額=所得税の限度額*18%※
※合わせて30%です。(地方公共団体により配分は違います)
限度額を超えて引ききれない場合
それでは所得税でも住民税でも引ききれなかった金額は最終的にどうなるのでしょう?
それは所得税でも住民税でも引ききれなかった金額については、翌年以降3年間、繰越すことができます。
よって翌年以降の外国税額控除について、限度額に満たない余分の金額がある場合は、繰越してきた金額を、その限度額に満たない余分の金額の範囲内で引くことができます。
《参考》
反対に、その年の外国税額控除について、外国の税金を全額引いても限度額が余った場合、この余った部分は翌年以降3年間繰り越すことができます。
よって翌年以降の限度額にその繰り越してきた分が加算されます。
例題
それでは例題でみてみましょう
①給与収入500万円
②外国株式の配当金 10,000円
あらかじめ引かれている税金
- 外国の税金 1,000円
- 所得税及び復興特別所得税 1,378円
- 住民税 450円
③配当金は総合課税を選択
まず所得税の税金計算の流れです。
①所得金額
給与所得3,460,000円※+配当所得10,000円=3,470,000円
※給与収入5,000,000円ー給与所得控除1,540,000円
②課税所得金額
所得金額3,470,000円ー基礎控除380,000円=3,090,000円
③所得税の額
課税所得金額3,090,000円*10%-97,500円=211,500円
④復興特別所得税の額
211,500円*2.1%=4,441円
③所得税の額と④復興特別所得税の額が計算されました。
次に外国税額控除の金額の計算です。
あらかじめ引かれている外国の税金は1,000円です。
全額引くことができるか、限度額を計算します。
外国税額控除の限度額
①所得税の限度額
211,500円*(10,000円/3,470,000円)=609円
②復興特別所得税の限度額
4,441円*(10,000円/3,470,000円)=12円
③合計
609円+12円=621円
限度額は621円となりました。
外国の税金は1,000円ですので、限度額の621円を超えています。
よって1,000円ー621円=379円が引けていません。
引ききれていないので、次に住民税から引きます。
住民税の限度額は、
①道府県民税
所得税の限度額609円*12%=73円
②市町村民税
所得税の限度額609円*18%=109円
③合計
73円+109円=182円
引ききれなかった金額が379円だったので、
379円ー182円=197円
まだ197円を引ききれていません。
よってこの197円は翌年以降3年間繰り越すことになります。
《参考》
限度額の基準となる所得税の額は、住宅ローン控除などを受けている場合は、控除後の金額となります。
よって各限度額も下がることになります。
まとめ
今日は外国株式の配当金をもらったときの外国税額控除についてみてきました。
外国株式の配当金をもらったときは、確定申告すると外国税額控除を受けることができます。
外国税額控除も含めて申告するかしないかの有利選択を検討しましょう。