所得税は担税力の違いから、10種類の所得に区分されます。
そして各所得ごとに計算してから、他の所得と合算したり、その所得のみで税金を計算したりします。
この各所得ごとに計算したとき、その所得がマイナスになったら、他の所得との損益通算はできるのでしょうか?
今日は所得税の損益通算についてご紹介します。
損益通算できる所得
まず所得税は次の10種類の所得があります。
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 退職所得
- 山林所得
- 譲渡所得
- 一時所得
- 雑所得
これらの所得ごとに計算します。
各所得ごとに計算した結果がマイナスになったときは、次の4つの所得がそのマイナス分を他の所得と損益通算できます。
- 不動産所得
- 事業所得
- 山林所得
- 譲渡所得※
※別個に計算する(分離課税といいます。)土地建物等の譲渡と株式等の譲渡については除きます。
経常所得と非経常所得
損益通算をするときですが、控除していく順番があります。
この順番を考慮する上で、まず10種類の所得を経常所得と非経常所得に分けなければなりません。
経常所得と非経常所得の違いは、
- 経常所得は継続的に発生する要素の強い所得
- 非経常所得は一時的に発生する要素の強い所得
となります。
10種類の所得を経常所得と非経常所得に分けると次のようになります。
①経常所得
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 雑所得
②非経常所得
- 譲渡所得
- 一時所得
- 山林所得
- 退職所得
さらに②の非経常所得から山林所得と退職所得を分けます。
これで①経常所得②非経常所得③山林所得④退職所得に分かれました。
損益通算する順序
それでは損益通算の順序をみていきます。
大きく3ステップあります。
まず第1ステップとして、経常所得内、非経常所得内でそれぞれ損益通算します。
もし経常所得内で損益通算をしてまだマイナスの場合、または非経常所得内で損益通算をしてまだマイナスの場合、つまりどちらか一方でもマイナスの場合は、第2ステップにいきます。
第2ステップは、経常所得内でマイナスが残っているケースは非経常所得と損益通算します。
非経常所得内でマイナスが残っているケースは経常所得と損益通算します。
つまり今度はクロスするわけです。
この段階でもマイナスが残る場合は、次の第3ステップにいきます。
第3ステップは、第2ステップで残ったマイナスを山林所得→退職所得の順番で控除していきます。
もし第3ステップでも控除しきれない場合は、一定の要件を満たすときは、残ったマイナスを翌期以降に繰り越します。
また山林所得がマイナスの場合は、
経常所得→非経常所得→退職所得の順番に控除していきます。
《注意》
この損益通算は、次の所得からは控除することができません。
- 分離課税による土地建物等の譲渡や株式等の譲渡による所得
- 源泉所得課税や申告分離課税を選択した利子所得や配当所得
《参考》
所得税には上記の他、株式等の譲渡所得と申告分離課税を選択した配当所得との損益通算もあります。
具体例
それでは次の具体例で見てみましょう。
- 事業所得▲50万円
- 給与所得 100万円
- 譲渡所得 ▲500万円
- 一時所得 150万円
- 山林所得 100万円
- 退職所得 250万円
まず第1ステップとして、経常所得、非経常所得内で損益通算します。
①経常所得
給与所得100万円ー事業所得50万円=50万円
②非経常所得
一時所得150万円ー譲渡所得500万円=▲350万円
①非経常所得のマイナスが350万円残っています。
よって次の第2ステップにいきます。
第2ステップは非経常所得内の損益通算後に残ったマイナス分を経常所得と損益通算するので、
①経常所得50万円ー②非経常所得350万円=▲300万円
となります。
まだマイナスが300万円残っています。
よって第3ステップにいきます。
第3ステップは山林所得→退職所得の順番に控除しますので、
山林所得100万円ー300万円=▲200万円
退職所得250万円ー200万円=50万円
よって損益通算した結果、退職所得が50万円となりました。
まとめ
今日は所得税の損益通算についてご紹介しました。
マイナスを他の所得と損益通算できるのは基本的に次の4つです。
- 不動産所得
- 事業所得
- 山林所得
- 譲渡所得
損益通算は控除していく順序もあり内容が複雑です。
まずはこの4つの所得を覚えておきましょう。