消費税の会計処理は税抜方式と税込方式があります。どちらで処理しても良いのですが、それぞれ特徴があります。
今日は税抜方式と税込方式について基本的な処理についてみていきましょう
税抜方式と税込方式
具体的な数字で見たほうがわかりやすいので、早速例題でみてみます。
例題
①売上1,080円(売上1,000円、消費税80円)
②仕入756円(仕入700円、消費税56円)
③経費108円(経費100万円、消費税8円)
まずは税抜方式の場合の仕訳です。
(1)期中の仕訳
①現金1,080円 / 売上1,000円
/ 仮受消費税80円
②仕入700円 / 現金756円
仮払消費税56円 /
③経費100円 / 現金108円
仮払消費税8円 /
(2)決算の処理
仮受消費税80円 / 仮払消費税64円(56円+8円)
/ 未払消費税16円
(3)消費税を納めた時
未払消費税16円 / 現金16円
期中の仕訳は、仮払消費税と仮受消費税という資産負債の科目を使うので、売上や仕入などの損益の科目に影響しません。
決算の処理で仮払消費税と仮受消費税を相殺して、差額分を未払消費税(又は未収消費税)として計上します。
納付期限までにこの未払消費税を納めます。
次に税込処理の場合の仕訳です。
(1)期中の仕訳
①現金1,080円 / 売上1,080円
②仕入756円 / 現金756円
③経費108円 / 現金108円
(2)決算の処理
消費税(租税公課)16円 / 未払消費税16円
(3)消費税を納めた時
未払消費税16円 / 現金16円
期中の仕訳は、消費税の金額を売上や仕入の金額に含めます。
決算の処理のときに納める消費税の金額を計算し、その金額を未払消費税として計上します。
納付期限までにこの未払消費税を納めます。
最終の利益
会計処理の違いはありますが、どちらを採用しても最終の利益は基本的に同じになります。
上記の例題だと
税抜方式
売上1,000円ー仕入700円ー経費100円=利益200円
税込方式
売上1,080円ー仕入756円ー経費108円ー租税公課16円=利益200円
どちらも利益200円となります。
ただし税込方式の場合、決算のときに計算した消費税を、未払消費税としてその期に計上するか、またはその期に計上せずに消費税を申告することになる翌期に計上するかどちらかを選べます。
つまりその期に未払消費税として計上した場合は、最終の利益は税抜方式と同じになるのですが、消費税を申告した翌期に計上する場合は、最終の利益がその金額分変わります。
消費税を申告した翌期に計上した場合の今期の最終の利益
売上1,080円ー仕入756円ー経費108円=利益216円
税抜方式と比べて未払消費税の金額分、利益が増えました。
最終の利益が変わると所得税や法人税といった税金にも影響してきます。
このケースの場合、利益が増えたので税金負担も増えます。
(ただし、翌期に消費税分の金額が費用計上されるので、翌期も含めたトータルでは基本的に同じになります)
期中の数字
税込方式の場合、消費税の計上は決算時にするので、期中の数字は税抜方式と違います。
上記の例題では期中の利益は、税抜方式で200円、税込方式で216円となります。
もともと消費税は預かっているものです。
消費税の金額を売上や仕入という損益科目に含めている税込方式の利益は正しいとはいえません。
よって期中の数字の正確性という点では、税抜方式のほうが良いです。
ただ税込方式のほうがわかりやすいので良いという方もいるでしょう。
そこで税込方式で処理する場合、消費税の金額を見積もり、その見積額を期中に計上する方法もあります。
期中の仕訳
消費税見積額16円 / 未払消費税16円
見積額なので実績の数字とはズレますが、ある程度の数字でも計上しておくと、決算時に大きく数字が変動することもないです。
まとめ
今日は、消費税の会計処理である税抜方式と税込方式をみてきました。
ポイントは
・最終的な利益は基本的に同じになる
・税込方式の場合、消費税の費用計上を翌期にすることができる
・期中の数字は税抜方式のほうが正確であるが、税込方式+見積額でも良い
このほか税抜方式と税込方式の選択の違いによって会計上・税法上の有利不利がいくつかあります。
また別の記事でご紹介したいと思います。